司書を目指して三千里

困ったときの助け舟

設題

内容

1.図書館の役割
  図書館とは、「図書、雑誌・新聞、パンフレット、視聴覚資料、電磁的記録(DVD.CD)等の資料や情報を、司書等の専門的職員が中心となって、収集・整理・保存し、閲覧・貸出・複写・レファレンスサービス等によって提供する組織」(①p130)であり、図書館の役割は「読書と学習に必要な資料を収集し、人々が求める資料や情報を案内し、探索して提供することによって、人々の読書と学習を支援することである。特に、図書館は、個人で利用できるため、読書と個人学習に適しており、関係機関と連携・協力することによって、豊かな読書と専門的な学習を支援することができる。」(①p130)と薬袋は述べている。
  図書館の個人で、たった一人でも利用できる点が他の社会教育施設の役割との違いであり、利用者にとっても大きなメリットだろう。
 また、薬袋は、日本や世界各国のさまざまな人々が出版・刊行した資料や情報を収集・提供することで地域や国境を越えた知識の流通・伝播・普及を促進することや、過去の時代に出版・刊行された資料を収集・保存し、次の時代の人々に提供することで、世代間の文化的・知的遺産の累積と継承を行うこと、さらに利用者の情報調査能力の習得なども図書館の役割として挙げて(①pp130-131、139)おり、こういったさまざまなサービスは生涯学習の自発的・自律的な学習活動に大きく貢献できるものであると考える。

2.今後の役割について
  公立図書館では、社会や人々の生活の変化により、「2000年代以降、ビジネス支援、健康・医療情報サービス等の新しいサービスが取り組まれてきた」(①p134)2006年に発表された『これからの図書館像』では「これまでの貸出サービスに加えて、地域の課題解決の支援に取り組むこと(中略)サービス方法として、図書のほか、雑誌・新聞記事、パンフレット、チラシ等の多様な資料の提供、レファレンスサービスの充実、IT技術(インターネット等)の活用、講座・セミナー等の開催、関連機関・団体との連会・協力を提案」(①p136)している。
  また、薬袋は「図書館は、学習に必要な資料や情報を提供するため、今後、社会教育における役割はさらに重要になると思われる」(①p144)としており、予算削減が進んでいく中でも実現可能なことを模索し、連携・協力により更なる発展を遂げていくべきである。また、「図書館の利用は住民による学習の一環であることを明確にし、利用の数量だけでなく、内容も広報するべき」(①p145)であり、そうすることで図書館をきっかけとして学びを始める住民が増えるのではないだろうか。

 
 1.社会教育行政
  社会教育行政は教育基本法でその基本的な役割を「図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない」(②)と規定されている。また、社会教育法では「社会教育の奨励により必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作成、頒布そのほかの方法により、すべての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならない。」(③)とされており、これらの内容を踏まえ馬場は「社会教育行政は、公民館、図書館、博物館の設置、学級・講座の実施、イベントの開催、指導者の研修などさまざまな施策を通じて、人々の自発的・自律的な学習活動を奨励・促進・支援するところに主要な任務がある」(①p47)としている。

2.社会教育施設
  社会教育施設の役割は「公民館であれば、学級・講座などの実施や学習相談・情報提供などが考えられる。図書館であれば、資料の貸出やレファレンスサービス、移動図書館の設置や読み聞かせの会の開催なども例として挙げることができる。博物館であれば、展覧会の開催というようなことにとどまらず、資料の収集・保存そのものや、資料に関する調査研究・展示・教育普及などの諸活動」(④)を行うことである。
   また、教育基本法や社会教育法の改正以降は社会の変化に伴って、「人々の学習ニーズに応じた学習機会の提供だけでなく、地域課題の解決や学校・家庭・地域の連携促進など社会の要請にも対応するべく、その機能の充実」(①p55)が社会教育施設には求められており、そのために社会教育施設間の連携や協力が必要となる。

3.まとめ
  鈴木は「行政が直接提供する学習機会における学習課題(中略)の設定や民間の活動を支援する際の基準として、公共的課題の認識と解決に向けた方向付けがされているかが必要なのである。それも、継続的に。」(①p17)と述べている。営利事業では実現しづらい継続的な公共的課題の認識と解決に向けた動きを続けることが社会教育行政の役割の根底にあると考える。もちろん、社会や利用者のニーズに合わせてさまざまな取り組みを行っていく必要もある。予算の削減、業務の多忙化が進む昨今であるが、柔軟に対応することが必要だろう。

 

〈参考文献〉

①鈴木眞理、馬場祐二朗、薬袋秀樹『生涯学習概論』(樹村房 2014)
教育基本法文部科学省http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/mext_00003.html〉2023年6月2日閲覧
③社会教育法 e-Gov法令検索〈http://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000207〉2023年6月2日閲覧
生涯学習研究e辞典 鈴木眞理「社会教育施設の概念」〈ejiten.javea.or.jp/content5404.html〉2023年6月2日閲覧

山本恒夫『生涯学習概論』(東京書籍 1998

〈講評〉

最初の設題はこれでよいです。前回指摘した内容が丁寧に述べられています。地域の課題を解決するなどの新しい図書館像が求められています。

二つ目の設題はこれでよいですが、施設ごとの役割についてもう少し詳しく述べるとよかったですね。施設ごとの役割が違うので、目的に応じて活用することが求められます。

これで合格です。今後も精進して頑張ってください。

 

 

〈感想〉

生涯学習概論は教科書を読み解くのに苦労した記憶ですが、社会教育施設としての図書館についてよく知ることができて、好きな科目の一つになりました。

レポートに苦戦したおかげか、試験では90点をもらえたので、再提出に悩んでいる方はポジティブにとらえて、ゆっくり取り組めばよいかと思います。応援しています。